目に視えない私と目が見えない彼
ドキドキと心臓の鼓動が早くなる。

何も言わずに握った手を、ぎゅっと強く握り返してくれた。来衣先輩の手はゴツゴツして大きくてあたたかい。

自分から手を握ったくせに、胸は高鳴り続けて、上映前で静まり返る中、自分の心臓の音が響いていないか心配だった。

ちらりと隣の来衣先輩を見るとイヤホンジャックの音声に集中するように目を瞑っていた。その横顔があまりにも綺麗でしばらく見つめた。

ドキドキが収まらないまま、上映が始まる。

繋いだ手を離そうかと思ったけど、守護霊代行のルールで私からしか触れることは出来ない。

そう思うと、もう少し、もう少しだけ・・・・・・彼のぬくもりを感じていたかった。
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