目に視えない私と目が見えない彼
「杏子はハンバーグね!」

「俺はがっつりから揚げ定食だな。未蘭は?なにが好きなの?」

「好きなもの?…オムライス、かな」

生前、お母さんのふわふわ卵のオムライスが大好きだった。思い出して胸の奥がきゅっと痛くなる。

「ご注文はお決まりですか?」

「……ハンバーグセットとから揚げ定食。それから、オムライス」

「あれ?お兄ちゃん、いつもみたいにご飯大盛りにしなくていいの?」

「……あ、ああ、今日は、な。あと、ドリンクバー3つで」

なにか言いたげな言葉の間に感じた。少し気になったけど、次に待ち受ける危険に気を取られて、小さな不信感はどこかにいってしまった。

「……3つ、で、よろしいですか?」

店員さんは見えている人数とドリンクバーの数が合わないから不思議そうにきょとんとしている。

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