目に視えない私と目が見えない彼
3人で笑いあった。来衣先輩と杏子ちゃんと過ごす時間が、あたたかくて幸せで、ずっと続けばいいのに。密かに願っていた。

そんなことを願う資格なんて、私にはないのに。

「未蘭さん?!なんで泣いてるの?」

杏子ちゃんの言葉に私自身も驚いた。頬を触るとひんやりと冷たい感触。自然と涙が溢れていた。

「あれ、わ、私……」

涙が溢れた理由はわからなかった。この居心地の良い空間の尊さも、来衣先輩が死んでしまうかもしれないという恐怖も、自分が死んでしまったという事実も、涙が勝手に溢れてくるのに思い当たる節が多すぎた。

もう、心がぐちゃぐちゃだった。

「杏子ちゃん、私、全部話そうと思う」

「未蘭さん、で、でも……」

「この選択が正しいのかはわからない。ただ、他に助ける方法が見つからないの。・・・・・・来衣先輩、ご飯食べた後、少し話せますか?」

———最後のルール違反をする。
全部話そう。ルール違反をしたら追放されると最初のころに柊に聞いた。追放の詳細はわからない。

怖くて仕方ないけれど、来衣先輩を助けられるなら、追放されてもいいと本気で思ったんだ。
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