目に視えない私と目が見えない彼
私たちの様子を気にして、杏子ちゃんと来衣先輩もリビングへと降りてきた。

「・・・・・・大丈夫?」

殺伐とした雰囲気を心配するように来衣先輩が発した。

「・・・・・・大丈夫よ。みんなでご飯にしましょう」

その言葉を聞いて、昨日の光景が頭の脳裏に浮かんだ。また、盛り塩出されるのかな・・・・・・緊張感が全身を駆け巡る。

どうしても顔が俯いてしまう。テーブルの前に出されたものを、見たくないものを確認するように薄らと目を開けた。


「……これって」

「見たらわかるでしょ?」

「・・・・・・盛り塩じゃない」

目の前には盛り塩じゃなく、コップに水が注がれていた。それだけのことだけど、いつ消されてしまうか恐れていた私にとっては、認めてもらえたのかなと感じる出来事で嬉しかった。

ガタッ、イスから立ち上がる音と共に来衣先輩のお母さんが勢いよく立ち上がった。私の心臓はドキリと跳ねる。

「未蘭さん、ありがとう。・・・・・・消そうとして、ごめんなさいね」

「え、あ、いえ・・・・・・」

・・・やっぱり私のこと消そうとしてたんだ。それは知りたくなかったなあ。そう思いつつも、来衣先輩のお母さんの本当の笑顔が見れたことが嬉しかった。
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