目に視えない私と目が見えない彼
夕方になり風が強くなってきて、嫌な胸騒ぎがするように、胸がざわついた。

視線の先に公園を捉えたと同時に、強い風が吹いた。「あっ、」ふわりと来衣先輩が被っていた帽子が風と共に舞い上がる。場所を少し移動した帽子は、静かに道路に落ちた。

杏子ちゃんからプレゼントされた大切な帽子。
車に轢かれでもしたら、汚れてしまう。考えるよりも先に私の足は動いていた。

「未蘭!」

「私は平気ですから!」

そう、私は幽霊なので車に轢かれることはない。自転車にぶつかることなく、通り抜けたことで実証されていた。来衣先輩の心配する声を背中に、帽子が落ちた道路へと向かっていく。

私のことは通り抜けるから車がこようとも、ゆっくりと帽子を拾った。飛ばされた帽子を手に取り、戻ろうと振り返ると見えた光景に驚愕した。
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