目に視えない私と目が見えない彼
来衣先輩が白杖を投げ捨てて、道路目掛けて走ってくる。

な、なんで?
もしかして、私を助けようと…?

クラクションの音が辺りに鳴り響く。
私は幽霊だから轢かれないのに。

彼は私を助けようと、見えない道路に飛び込んできた。

私のせいで来衣先輩は死んじゃうの?!

私は幽霊だからここに存在しないのに、助けになんてこないでよ。

「だめ、こっちに来ちゃだめ!」

私はアスファルトを蹴り上げて、来衣先輩へと手を伸ばした。

触れることが出来た来衣先輩の肩をできる限りの力を振り絞って、ドンっと押す。

「来衣先輩!!」

私の叫び声は、鳴り続けるクラクションにかき消された。

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