目に視えない私と目が見えない彼
瞬きをした次の瞬間には、車は私を通り抜けていた。

「危ないな!急に出てくんなよ!」

車の運転席の窓を開けてそう吐き捨てた言葉は来衣先輩に向けられていた。

「来衣先輩!」

道路に倒れこむ来衣先輩に駆け寄る。

「来衣先輩、大丈夫ですか?!」

「……未蘭は?」

「私は、もう死んでるんだから、車に轢かれないんです」

「ははっ、なんだ、そっか」

「だからっ、…うっ、なん、で、助けになんか」

「冷静に考えたら助ける必要なかったんだな。勝手に体が動いてた。無事でよかったよ、未蘭」

「び、病院、行きましょう」

「大丈夫だから、歩けるし」

幸いなことに来衣先輩は尻餅をついたくらいで、怪我はないようだった。来衣先輩の体をゆっくりと起こして、腰を支えながら、目の先にまで来ていた公園のベンチに腰掛けた。

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