目に視えない私と目が見えない彼


景色は白い世界に包まれていた。見覚えのある場所。初めて死後の世界に来た時に見た景色だった。

ここは、死後の世界。
どうやら来衣先輩と話の途中で、早川未蘭としての時間に終わりがきたようだ。

来衣先輩に好きと伝えることができなかった。この消えてしまう気持ちを伝えたかったのに。誰にも伝わることなく消えてしまう。



私はその場に力なくしゃがみ込んだ。
もう会うことのできない来衣先輩。脳裏に棲みついて離れない。



「未蘭ちゃん、7日間の任務お疲れさまでした」

泣き崩れる私をそっと包み込んでくれたのは楓さんだった。


顔を上げると、心配そうに眉を八の字に下げる柊も待っていてくれた。二人の顔を見たらなぜか、また泣きたくなった。

優等生ばかりが選ばれるエリート組。今までルール違反をする守護霊代行は、ほぼいなかったらしい。

私はルール違反をたくさんしてしまった。

生前の自分に戻ることも、勝ち組に生まれ変わることも、もうできないだろう。

でも、自分のしてきたことに後悔は何一つしていない。覚悟もできていた。

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