目に視えない私と目が見えない彼
「・・・そんな、私のために二人が犠牲になるなんて。私が悪いんだもん、私が延長します!」

私の申し出を断るように、顔を大きく左右に振った。

「だめよ。生前の自分に生まれ変わるということは大掛かりな事務作業や手続きがあるの。生前の未蘭ちゃんが死んだという事実を変えないといけないからね。ルール違反のペナルティを受けていたら、今度は早川未蘭ちゃんには戻れない」

「・・・・・・そ、んな」

「まあ、気にすんなよ、俺も楓さんも自ら申し出て好きでやったことだから」

「でも……」

「それに犠牲だなんて思ってないよ?未蘭ちゃんを助けたいと思った。ただそれだけ。
この記憶も忘れてしまうけど、今の未蘭ちゃんなら大丈夫。現世でもたくさんの幸せが待ってるよ」


私の背中をポンっと押した。背中を押されて前に出た私の目の前には、見覚えのある大きな扉があった。

初めて死後の世界に来た時に見たものだった。


「・・・・・・楓さん、柊!本当にありがとうございました。・・・・・・二人に出会えてよかったです」

私の投げかけた言葉に返事をするように、大きく頷いて微笑んだ。


私は大きく深呼吸をして、大きな扉の中に、自分の足で踏み込んだ。
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