目に視えない私と目が見えない彼
「……お母さん、あの公園で待ってていい?」

「え、でも、危なくないかしら?」

「もう、お母さんは心配しすぎ!なにかあったら、この防犯ベルを鳴らすから大丈夫だって」

まだ納得しないような顔で考えているお母さん。昔から心配性のお母さんに「もう高校生なのにな」自然と吐く息も深くなる。

「心配性すぎるよ、もう高校生なのに」そう文句を言おうと口を開いたはずなのに、出てきた言葉は違うものだった。



「……お母さん、いつもありがとう。朝ごはんも作ってくれてありがとう」

脈絡のない言葉は自分の意識とは関係なく出てきた言葉だった。「え?」今の状況に全く関係のない感謝の言葉が自分の口から出てきて、私が一番驚いた。なぜか伝えなきゃ、そう思ったんだ。

< 245 / 256 >

この作品をシェア

pagetop