目に視えない私と目が見えない彼
洗面所で顔を洗い、寝癖を治して、鏡に映る自分を見つめる。

学校だるいなぁ。気だるげに重い体を引きずって玄関へと向かっていく。


「いってきます」


お母さんの顔を直接見ずに、「いってきます」と言葉だけを残して、玄関のドアを開けた。

帰ってきてから話せばいいや。
そう、思っていた。

何の疑いもなく、また会えることを信じて疑わなかった。



玄関のドアを開けると同時に強い日差しが眩しく感じる。

強い日差しは夏を感じさせたが、頬に感じるひんやりとした風が夏の終わりを教えてくれるようだった。



今日もいつもと変わらない、
なんの変哲もない1日が始まると思っていた。
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