目に視えない私と目が見えない彼
若菜さんが教室移動で廊下を歩いていると、制服のポケットから、ひらりとハンカチが落ちた。音もせずに落ちたハンカチには気付かずに、先に進んでいく。

周りには誰もいなくて、ハンカチは廊下に落ちたままだ。

ハンカチ、これは拾えるのかな?
答え合わせするように柊に視線を向けると、返事の代わりにゆっくりと頷いた。


ハンカチに触れるのかな。おそるおそる触れると、きちんと手の中に収まった。

拾えた。そのまま、若菜さんのポケットにそっと戻す。



「俺たちから触るものは、触れるよ」

「さっきは私のことスッと通り抜けられたから、なにも触れないと思ってた」

「俺たちから触るものは、触れる。人から触られるものは通り抜ける。それが・・・・・・」

「ルール?」

「そうっ!」

「私からは触れるなら、助けられる範囲も増えるね」

「触れるものには『人』も含まれるから、守護対象者の体を触ったりするなよ?心霊現象だと思われて大変なことになるよ」


私たちの姿は視えないから、なにもないところから、腕を掴まれでもしたら・・・・・・それは怖いだろうな。

・・・・・・気をつけよう。
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