目に視えない私と目が見えない彼
「えっと、お怪我は本当に・・・大丈夫でいらっしゃいますか?」
なんて返せばいいのか迷った挙句に出てきた言葉は、焦りすぎて変な日本語になってしまった。
「別に、慣れてるから」
ボソッと呟くと表情一つ変えずに、ゆっくりと自分の力だけで立ち上がった。
幽霊になってから声を掛けられることなんてなかったので、会話が成り立つことに嬉しさを感じて胸の奥があたたかくなる。
「お前・・・・・・、やっぱりなんでもねぇ」
彼は何かを言いかけて止めた。言葉を飲み込むように、ごくんと喉を鳴らした。
顔を上げているけど、やはり視点が合っていない。私に向かって言葉を投げかけるけど、視線は違う方向を向いていた。
自分でゆっくり立ち上がり、暗闇の街の方へ消えていった。