目に視えない私と目が見えない彼
「未蘭、私も一緒に行こうか?」

「ううん、取りに行くだけだし、一人で行ってくるよ」

「見つかってよかったね」

「ありがとう」


携帯が見つかった安堵感から足取りは軽くなり、小走りで美術室に向かった。


走ってきた勢いそのままに、美術室の扉を開けた。美術室に足を踏み入れると同時に、インクと紙の匂いが入れ混じった匂いが鼻を刺激する。


美術館の空気は走ってきた校舎とは違う、なんだか、ピリッと身が引き締まる空気感だった。


・・・誰もいないのかな、


美術室内を見渡すと、イーゼルに立て掛けられたキャンバスの前に座り、ただひたすらに筆を動かしている人物がいた。うちの学校の制服なので、生徒ということは後ろ姿でわかった。


「・・・・・・あの」

私が美術室に入ってきても、微塵も反応を見せず、キャンバスに向かい続けている背中に向かって投げかけた。声は届いているのか、いないのかわからなかったけど、振り向こうとはしない。手を止める様子も見られなかった。

「・・・・・・あの!!」


さっきよりも張り上げた声は美術室内に響き渡る。
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