目に視えない私と目が見えない彼
コツコツと白杖とアスファルトが衝突する音がどんどん小さくなっていく。暗闇に溶け込んでいく来衣先輩の背中をずっと見ていた。


きっと、来衣先輩は目が見えていない。
白杖を使ってゆっくりとぎこちなく歩く来衣先輩の姿を見て確信に変わる。


どうして、白杖を使ってるの?
なんで、目が見えなくなってしまったの?


・・・・聞きたかったけど、聞くことのできない質問は、広がる夜の街へと消えていった。



目が見えない来衣先輩は、私が幽霊だとは気付かずに、生きてる人だと思って私に話かけてきた。

生きてる頃のように怖がられることなく人と会話が出来た・・・・・。


なんか、嬉しかったなあ。胸の奥が、じんわりとあたたかくなるのを感じた

学校で会ったりするかな。

会ったとしても、人と話すことはルール違反だから、もう関わることはないだろうなあ。




———この時はそう思っていた。
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