目に視えない私と目が見えない彼
・・・・・・痛く、ない。
耳に届く鼻歌がどんどん消え入りそうに小さくなっていく。
おそるおそる目を開けると、目の前には誰もいなかった。
急いで後ろを振り返ると、鼻歌を歌って自転車を漕ぐお爺さんの姿がどんどん遠くなって行くのが見えた。
ぶつかることなく私の中を通り抜けていったみたいだ。
改めて実感させられる。
私の存在は人には視えていない。
私がここにいることに誰も気づいてはくれない
胸がぎゅっと締め付けられたように痛かった。
来衣先輩は私の存在に気付いてくれた。
私が幽霊だとは知らずに、普通に話しかけてくれたんだよね。
転んだ時の傷は大丈夫だったのだろうか。
なんで白状を使っていたんだろう。
来衣先輩の目は見えなくなってしまったのかな・・・・・・。あんなに素敵な絵を描いていたのに。
頭の中は来衣先輩のことばかり浮かんでいた。
明日、学校にいるかな・・・・——。
そんなことを考えながら夜道を歩いた。