目に視えない私と目が見えない彼
「・・・・あのさ、柊も勝ち組に生まれ変わりたいの?」
「まあ、そうだな」
「自分の人生に戻りたくないの?」
「うーん、良いこともあったけど、辛いこともあったからなあ。俺の人生」
右手で頭をくしゃっと、かく仕草をして、ポツリと呟いた。何かを考えているような顔をして、うなだれている。
「・・・・・・そっか」
「勝ち組の人生選べるんだったら、そっちでやり直したいなって。考えてみろよ、女優と俳優の子供に生まれ変われたら、容姿端麗でお金持ちで最高じゃん」
「確かに、そうだ、ね」
生まれ変わることも悪くないのかな。
私は特別かわいいわけではないし、特別頭が良いわけでもない。
アイドルみたいな可愛い顔に生まれたかったなあ、と鏡を見ながら思ったし。
芸能人の子供に生まれたら最高だろうなあ、と何度も妄想したこともある。
勝ち組の人生を選べるなんて、ラッキーなのかな。柊の話を聞いて、素直にそう思った。