目に視えない私と目が見えない彼
今日担当する守護対象者の田口先生の元に辿り着いた。

「情報によると、この部屋に田口先生は一人暮らしか。・・・・・・お邪魔します」


先生には視えてないので、挨拶をする必要はないけれど、自然と漏れてしまう。ドアは通り抜けられるので、難なく部屋に入ることが出来る。便利なものだ。


「うっ、臭っっ!!」

スッとドアを通り抜けて、部屋へ入った瞬間、悪臭が鼻の奥をついた。


…なんの匂いだろう?
辺りを見渡すと、原因はすぐに見つかった。

ゴミ袋があちこちに積み上げてある。


く、臭い。
田口先生、掃除とかしないんだ。
・・・・・・うぅ、最悪だ。


臭いし、部屋も汚い。
どちらかというと、綺麗好きな私には辛すぎる環境だった。



今すぐこのゴミの山を片付けたい!
でも、ゴミを捨ててくるわけにもいかないし。


「ぐごごご、ががが、ぐごおおおおお」


まるで猛獣の鳴き声のような声が耳に届く。声のする方に視線を向けると、この悪臭の犯人、田口先生は豪快にいびきをかいて眠っていた。



「・・・・・・はあ、」


今日の守護対象者は田口先生なので、1日そばにいなければならない。

その先生の部屋が汚部屋だったなんて、大きな溜息も出てしまう。


この汚い部屋でずっと前に待ってるのは苦行すぎた。居ても立っても居られずに、床に落ちてるゴミを試しに指でつまみ上げて拾ってみる。


本当はダメなことは、わかってるけど・・・・、
  
「・・・・・・ゴミも触れる、これで片付けられる・・・・・・」

ゴミを触れられることが確認できたので、居ても立っても居られず、少し片付けることにした。


守護霊代行のルールで、私たちから触るものには触れれるんだよね。


・・・・・・ゴミ片付けできちゃうじゃん。
少し、少しだけなら・・・・・・いいよね。
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