目に視えない私と目が見えない彼
最初は、一つ、二つのゴミを片付けるだけで我慢するつもりだった。いざ掃除を始めると、ゴミを捨てる手が止まってはくれなかった。
無我夢中で掃除をした。
…気付いた頃には、汚部屋はゴミが無くなり綺麗な部屋に変わってしまった。
やってしまった。
綺麗にしすぎてしまった。
ちらりと田口先生に視線を向けて確認すると、豪快ないびきをかいて、まだ寝ている。
・・・・・・この様子は、しばらく起きそうにない。
部屋を見渡すと、本がたくさんあり、部屋の壁には受け持ちクラスの集合写真が飾られていた。
なんか、意外。田口先生のイメージだとクラス写真なんて、絶対飾らなそうなのに。
写真をじっと見ると、見覚えのある顔が真っ先に目に入った。
「…来衣、先輩」
来衣先輩の担任って田口先生なのか。
写真の中の彼は、楽し気に笑顔を浮かべていた。
私の中の記憶の来衣先輩は、無表情で仏頂面だったので、驚いて見入ってしまった。
「来衣先輩ってこんな風に笑うんだ。
こんな綺麗な顔で笑うんだもん…そりゃ、モテるはずだ」