目に視えない私と目が見えない彼
ゴツッッ、と辺りに鈍い音が響き渡る。
来衣先輩が足を押さえてしゃがみ込んでいた。足をどこかにぶつけたようだった。
「いったっ」
悲痛な叫びは痛みを物語っていた。
また怪我してる。大丈夫かな・・・・・。
心配でたまらなかったけど、ここで声を掛けてしまったら、周りにいる生徒たちに私の声が聞こえてしまう。
助けたいけど、助けられない。
手を伸ばせば直ぐに助けられる距離にいるのに、届かない。凄くもどかしい。
そうだ、田口先生。
田口先生に目の見えない来衣先輩を助けて欲しい。
辺りを見渡すと、田口先生はいなかった。
先生なのに!こういう時にいないなんて役立たず!
すでにその場にいなくなった田口先生に不満が募り、心の中で悪態をつく。