目に視えない私と目が見えない彼
来衣先輩はすごいなあ。
何を言われても負ける気がしない。
来衣先輩の強気な姿勢に感心していると、嫌な空気が漂ってきた。
来衣先輩の態度が気に食わなかったのか、ヒソヒソと嘲笑いながら、来衣先輩の背中を睨みつけている。嫌な予感しかしない。
えっ・・・・——。
1人が先回りをして、足を掛けようと、わざと足を伸ばしているのが見える。
その表情は悪意に満ちていて、最悪の状況が頭に浮かんだ。
このままだと、足をかけられてバランスを崩して転んでしまう。大きな怪我をする危険だってある。
相手が目が見えないからって、こんな嫌がらせをするなんて信じられない!
怒りが、ガーっと込み上がってきた。
でも、私がここで何かアクションを起こしたら、私の存在がバレてしまう可能性が高い。
助けたいけれど、対象者じゃない人を助けるのはルール違反になってしまう。
田口先生はなにやってんだろ。先生なら助けるべきでしょ。引っ張り出してきたいくらい。
辺りを見渡しても、田口先生はいない。
生徒たちもまばらで、少なからず見ている生徒は関わりたくないようで、知らないふりをしてこの場から立ち去っている。
…なんで、誰も助けようとしないの?
込み上げてくる怒りで、感情のコントロールが出来ず、怒りを抑えらなかった。
———私は、ルールを破ろうとしていた。