目に視えない私と目が見えない彼
その時、ゴミ箱からこぼれ落ちているペットボトルが目に入った。
——— これだ、
気付くと体が勝手に動いていた。
落ちていたペットボトルを拝借して、力一杯思いっきり投げつけた。
「・・・・・・痛っっ!!」
私が投げつけたペットボトルは、無事に男の頭にヒットした。
「はあ?!何もないところからペットボトル飛んできたんだけど!」
男は目を見開いたまま辺りをキョロキョロと見回している。
誰もいないところからペットボトルが飛んできたのだから、驚くのも無理はない。
やばい。やってしまった!
私はやってはいけないことをしてしまった。
床にコロコロと転がるペットボトルが証拠だ。
嫌がらせをしようとした男たちは、誰に投げられたのか分からず、犯人を探すように辺りを見渡してあたふたしていた。
それ以上に、ルール違反した私も焦っていた。
あの2人が悪いとはいえ、ペットボトルを投げちゃった・・・・・。
まずい、まずいよね。
でも・・・・・・こうなったら!
半場やけくそ状態の私は男2人の元へと歩み寄った。
「・・・・・・また、嫌がらせしたら、もっと痛い目に合いますよ」
耳元でボソッと囁いた。
「ぎ、ぎゃあああああああああ!
な、なんか、聞こえたっ、やばい、行こうぜ」
私の姿が視えない先輩たちは、心霊現象だと思ったのだろう。
一目散に駆け足でその場から去っていった。
来衣先輩が怪我せずに済んでよかった。
ルール違反をした罪悪感よりも、来衣先輩が無事で安心する気持ちが大きかった。