目に視えない私と目が見えない彼
目の前の車がスローモーションで私を目掛けて進んでくる。動きたくても足に力が入らない。

きっと今起きていることは1秒の出来事なのに
頭の中では、ゆっくり物事を考えられていた。


これって、死ぬからなのかな?

死を覚悟した瞬間、スローモーションになるって聞いたことあるけど本当なんだ。


頭の中でゆっくり物事を考えられている。

まだ16歳なのに、これで私の人生終了かあ。


私、恋をしたことなかったのに。
恋を知らずに死んじゃうなんて、

一度でいいから恋をしてみたかったな。


死んじゃうなら、「ご飯作ってくれてありがとう」ってお母さんに伝えればよかった。

「ありがとう」ってたくさん言えばよかった。
顔を見て「いってきます」も言えてないや。

後悔の念が押し寄せてくる。


きっと私はこのまま車に轢かれるだろうけど
この少女は守りたいなぁ、

ぎゅっと、女の子の体を抱きしめて包み込んだ。



痛いの嫌だなぁ、
怖い怖い・・・・——。


恐怖でぎゅっと目を瞑って、ぐっと唇を噛み締めた。
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