目に視えない私と目が見えない彼
「先輩は本当に辞めたいんですか?」
「お前にはわからねぇよ」
「分からないです。わからないけど、わかりたいです。・・・・わからなくて苦しいです」
「なんでお前が苦しいんだよ」
「・・・・っだって、来衣先輩は悪くないのにっ・・・・・これからの人生長いのに、ここで辞めてしまったらっ・・・・・」
目の奥が熱くなるのがわかった。涙がすぐそこまで来ている。自分がもう学校に通えない苦しさと重ねて、涙が込み上げてきた。
「お前が泣くことないだろ」
「・・・・・っ、泣いてっ、ないです」
涙を必死に堪えて鼻を啜ったので、バレてしまった。
「はあ・・・・・・なんだよ、せっかく決断できたのに。辞めたくなくなっちまったよ」
「それって・・・・・・」
顔を上げると、一瞬来衣先輩と視線が重なったような気がして、どくん、と心臓が跳ねた。
来衣先輩は目が見えてないので、目が合うことはない。・・・・・・ないはずなのに、重なった瞳に吸い込まれるように目が離せなかった。