目に視えない私と目が見えない彼
最上来衣side
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夜を迎えると俺の世界は黒一色に包まれる。
見えなくなった世界は、孤独で、闇で、これが夢ならいいのに。
そう毎日願い続けている。
暗いところでだんだん見えづらさを感じていた。
道を歩けば路上に止めてある自転車にぶつかったり、つまずくことは日常になった。
見えにくさを感じ始めた頃、親や友達、誰にも相談しなかった。
病院にも行かなかった。…行きたくなかった。
病気だと診断されたら、未来に希望が持てなくなる。
自分自身のことなのに受け入れるのが怖かったんだ。
弱かった、自分から逃げていた。
ある日、夜になると目の前全てが暗闇に包まれた。
今までは見えづらかったものの、少しは見えていたのに、俺の世界から色彩が消えた。
その絶望感は今でも覚えている。
もう、生きる意味を失ったような、
このまま世界が終わってしまえばいい。
そんなことを思うほどだった。
暗闇で目が見えない分、耳の神経が研ぎ澄まされて、いつもより音が敏感に響いた。音は鮮明に聞こえてくるのに、目の前は真っ暗で光一つ見えない。
一人だけ別世界に来てしまったようなそんな錯覚に陥る。
どうしようもなくなって、その場にしゃがみ込んだ。
それから…病院を受診して診断された。