目に視えない私と目が見えない彼

 "網膜色素変性症"


病名を言い渡された瞬間、体の力が全身から抜けて立ち上がれなかった。

その病名はネットで調べたことのある病名だった。
自分に当てはまる症状が多くて、心の片隅では予想していたはずなのに、実際に診断された後も、受け入れることができなかった。


4,000人から8,000人に一人発症すると言われていて、進行すると視力が低下し、全く見えなくなってしまうという難病だ。

この病気に罹っている親族はおらず、原因はわかっていない。


・暗いところでの見え方が悪くなる(夜盲)
・視野が狭くなっている(視野 狭窄 )

どちらの症状も出ている俺は、夜はすべて暗闇に包まれて何も見えない。一筋の光さえ見えない。

昼間は視野が狭くなる中、かろうじて少し見えるくらいだ。全体が白っぽく感じて、人の顔はほとんど認識できない。

俺の病魔の進行は早いらしく、視力のほとんどを失っていた。
< 79 / 256 >

この作品をシェア

pagetop