目に視えない私と目が見えない彼

今まで目が見えるのが当たり前だった。
これから先、いつ失明するのかわからない。


"絶望"
その時の俺を表すのにぴったりな言葉だ。

今までの人生が崩れていくような絶望を前に、前向きに考えることなんてできなかった。

まさか、いや、そんな、信じられなかった。
いや、信じたくなんてなかったんだ。

見えない事実が怖くて、向き合えなかった。
認めたくなかったんだ。

絶望の中、ただ生きていた。

寝て、起きて、ご飯を食べて、トイレに行って、お風呂には入って、また寝る。

それはまるで作業のように繰り返され、そこには希望も光もなかった。あるのは暗闇と絶望だけだった。




暗闇の中、初めて一筋の光が見えた。
光に包まれた彼女を見つけたんだ。

理由も原因もわからない。

でも、それで構わないと思った。
どんな理由でもいい。俺にとっては光なのだから。
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