目に視えない私と目が見えない彼


俺は今日、退学届を制服の内ポケットに忍ばせていた。

今年で卒業の高校三年生。あと数ヶ月で卒業を控えて、本当は退学なんてしたくなかった。


しかし、この病気のせいでみんなに疎まれるのが限界だった。
病気になる前は、ウザいくらいに群がってきたくせに、今は誰1人とこなくなった。


『目が見えない最上は、ただの人以下』


これは当たっているかもしれない。
平気なフリをしたけど、本当は傷ついたし、心が折れた。

迷っていた決心が固まった瞬間だった。





「———だめです!」



やっと決心がついたのに、なぜか引き止める奴がいた。声のする方に顔を向ける。


・・・・・・顔は見えない。
昼間は少し見えると言っても、ほんの僅かで、顔の識別は難しいくらいだった。



俺を引き止めようとする奴の周りには、灯りが点っているように見える。
誰だ?なんでお前の周りには灯りが見えるんだ?

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