目に視えない私と目が見えない彼
「お前、名前は?何年?」
「・・・・・・」
俺の問いに答えないので、しばらく無言の時間が続く。
おい、勘弁してくれよ。
相手の表情が見えない俺にとって、無言の状態は、どこか知らない場所に1人ポツンと取り残されたように居た堪れなくなるんだ。
「・・・・・・2年の、早川 未蘭です」
「・・・・・・未蘭」
聞いたのがまずかったのかと自分を責め立てていたので、返答が聞けてまずホッとした。
「・・・・・・未蘭?」
どこかで聞いたことがあるような。
頭の片隅にある記憶の蓋を開けたくても、顔が見えないから思い出せない。
「・・・・・・では、私は行きますね」
「待て!・・・・・・昨日会ったコンビニの前で待ってる」
「えっ、」
「目が見えなくなってから、扱えなくて携帯を捨てたんだ。だから連絡手段がない。18時に昨日のコンビニで・・・・・・」
「い、けません」
「まあ、俺は行くけど・・・・お前、未蘭が来るまで待ってるから」
困らせるのは承知で出た言葉だった。
相手の気持ちなど考えずに、なんて自分勝手だろうか。
自分でもわかってる。
わかってるけど、もう一度会いたいんだ。
君は俺の光。暗闇に取り残された一筋の光。
こんなこと言われても迷惑かもしれないけど。
また、会いたい。ここで約束しなければ、もう会えないような気がする。
目が見えなくなってきてから、自分の気持ちを隠して、平気なフリを武装してきた俺だけど、この気持ちには嘘をつきたくなかった。