目に視えない私と目が見えない彼
密会
꙳
職員室に入ってくる、窓からの日差しが赤みを帯びた光に変わってきた。
デスクに座って、なにやら仕事をしている田口先生を、少し離れたところから見守りをしている。
田口先生もお仕事終わる時間かな。
「名簿を見ながら、熱心ですね。
…ああ、最上ですか?」
「担任なのでね。何か力になれないかと」
名簿を見つめている田口先生に声を掛けてきたのは、生徒から人気のある椎名先生だった。椎名先生は若くて優しくて人気のある先生だった。
「・・・・・・正直、ろう学校とか考えた方がいいんじゃないですか?」
「それはなぜです?」
「だって・・・・・・普通の生徒と同じ生活は無理でしょう。他の生徒の迷惑になりでもしたら、ねえ」
むっ、なんか嫌な感じだ。
・・・裏での椎名先生はこんな感じなんだ。
半笑いで言う椎名先生には嫌悪感を抱いた。
「・・・・・・その時は俺がなんとかしますから。
担任なのでね、このまま卒業させてやりたいんですよ」
「・・・・・・まあ、田口先生が、そう言うなら何も言いませんよ?」
田口先生は淡々と告げたが、その言葉からは強さも感じられた。椎名先生は少し気まずそう空笑いを浮かべて離れていった。
田口先生、良い先生だったんだ。
今まで誤解してたよ・・・・。