目に視えない私と目が見えない彼
「わ、わたしは・・・・・」
嬉しいけど、喜んではダメなんだ。
私に喜ぶ権利なんてないんだから。
「それに、未蘭の声は表情がついてるみたいなんだ」
「声?」
「そう、目が見えないから俺の情報源は耳が多い。声だけだと本当は何を思っているのかわからなくて、変に勘繰ってしまう」
「・・・・・・うん」
「未蘭の声は感情が豊かで、俺の目にも表情が映し出されるみたいなんだ」
目尻に皺を作ってくしゃっと笑う笑顔に、少し違和感を覚えた。
私の記憶の中の来衣先輩は、気だるげそうに話しかけられてもぶっきらぼうに返すばかりで、笑顔なんて見せなかった。
なんか、今の来衣先輩・・・・・・、
「キャラ違くないですか?」
「そうか?
視力に障害がある分、言葉ですべて伝えたいと思ったんだ。・・・・他の男より不利な状態だからな」
・・・・・・不利?なにが不利なんだろう?
来衣先輩の言葉の意味がわからなかった。
黙り込む私に優しいまなざしを向ける。
来衣先輩の眼差しに私の心は簡単に惑わされて、ドキドキと鼓動が速くなった。
態度が180度変わった来衣先輩。
まるで猛獣が飼い犬のように懐いたような、そんな感覚に陥る。
なんか、来衣先輩といると、調子が狂うな。
彼の表情や言葉は、恋愛経験値がない私には刺激が強過ぎて、簡単に胸が高鳴ってしまう。
私の鼓動はうるさくて、来衣先輩にも聞こえてないから心配になるほどだった。