契約結婚のはずが、御曹司は一途な愛を抑えきれない
前社長の省吾の父親は入院中だった。

省吾の実家には母親と省吾の兄が住んでいた。

省吾の兄は母親から溺愛されており、本来なら長男が会社を継ぐのだが、

省吾の兄は自分のやりたいことがあると、父親が入院した時、母親に言われた。

「省吾、あなたが会社を継ぎなさい」

「兄貴が継げばいいだろう、俺は長男じゃねえし」

「お兄ちゃんはやりたいことがあるのよ、それに省吾の方が適任よ」

「俺もやりたいことがあるんだよ、俺は嫌だ」

確かに、性格上、省吾が適任だ。

兄は人との関わりが苦手で、人の上に立つ性格ではない。

父親の秘書をしていた渡辺にも、言われたことがある。

「お父様の後継は省吾様が適任です」

「お前まで兄貴の見方かよ」

確かに人の上に立ち、まとめ上げて行く力は抜群だ。

ただ、一つ、難がある。

省吾は母親に甘えられずに育った。

今までの恋人は全て、省吾より年下で、省吾の好きな女に甘えてしまうことが、

うまく行かない原因の一つであった。

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