契約結婚のはずが、御曹司は一途な愛を抑えきれない
省吾は車に乗り込み、発車させた。

帰り道、省吾は一言も話さない。

マンションに近づくと、省吾はポツリと言葉を発した。

「ごめん、嫌な思いをさせたな」

「大丈夫です」
省吾は車をマンションの駐車場に停めて、ミクの腕を引き寄せ、抱きしめた。

「省吾さん?」

「ごめん、しばらくこのままでいてくれ」

省吾は母親に甘えるように、ミクの胸に顔を埋めて、ミクの背中に手を回した。

「ミク、ミクとこうしているとすっごく癒される」

「そうですか」

「うん、ミク」

省吾はミクの胸に頬をくっつけて甘えるような態度を取った。

ミクは省吾の頭を撫でた、まるで母親が子供をあやすように……

ミクが恋人に振られた理由、それは癒されない、冷たいといつも言われた。

「男だって、癒されたい、甘えたい時もあるんだ、ミクは完璧すぎるから、
疲れるし、愛情を感じない、冷たいんだよ」

いつも言われるセリフだ。

省吾は癒されると言ってくれた。

ミクに甘えてくる。

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