契約結婚のはずが、御曹司は一途な愛を抑えきれない
その頃ミクはシャワーを浴びて、鏡に映った自分の身体に愕然とした。

キスマークが全身に散りばめられていた。

もう、こんなにキスマークつけてくれちゃって……

やっぱり、私、あの人としちゃったんだ。

月曜日の朝、会社の社員通用口へ向かうと、いつもバッグに入れてある社員証が見当たらない。

えっ、落とした?

バー?それとも電車の中?

その時ハッと気づいた。

ホテルかも……

どうしよう、ホテルの名前も住所もわからない。

「これないと入れないだろう」

そう言って私の社員証を差し出したのは、一夜を共にした男性だった。

わざわざ届けてくれたの?

「ありがとうございます」

ミクは差し出された社員証を受け取り、通用口を通った。

振り向くと、その男性は背を向けて出ていった。

名前も聞かず、どうしよう。

どこの誰なの?

そして、今日は新社長就任の挨拶の日だった。

「先輩、新社長、かっこいいって評判ですよ、三十歳のやり手らしいです」

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