契約結婚のはずが、御曹司は一途な愛を抑えきれない
興奮して新社長の話をするのは後輩の鹿島あやかだ。

二十歳で、恋とおしゃれにしか興味がない。

もちろん、この会社にも結婚相手を探すために就職した。

ミクにしてみれば、どうでも良かった。

社員証を届けてくれた一夜を共にした男性の方が気になっていた。

リモートで挨拶が始まった。

あやかはめっちゃ、興奮している。

「先輩、社長、超イケメンですよ、独身らしいんで、私頑張っちゃいます」
全く、いいな、悩みがない人は……

そして、ふっと画面に目をやった。

その画面に映って挨拶をしていたのは、紛れもない一夜を共にした男性だった。

嘘、社長?

辰巳グループ御曹司、辰巳省吾だった。

ミクの頭の中は真っ白になった。

省吾の挨拶も無事終わり、秘書がこれからのスケジュールを話し始めた。

「社長、どちらに行かれるのですか」

省吾に声をかけたのは秘書の渡辺淳二、四十五歳、父親の代からの秘書だ。

そして、省吾にしてみれば良き相談相手だ。

「ちょっと総務部に行ってくる」

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