契約結婚のはずが、御曹司は一途な愛を抑えきれない
「どうして?」
エマはびっくりして大きな声を上げた。
「電話だと、ちょっと……」
「わかった、七時に駅で待ち合わせね」
「うん」
「ミク、大丈夫?」
「大丈夫」
そして電話を切った。
ミクは全然大丈夫じゃなかった。
省吾との結婚生活は、予想していた以上に有意義な時間を過ごせた。
何より、多分、きっと、ミクは省吾を好きになっていったのである。
はじめは一夜の過ちだったし、年老いた両親への援助、そして、自分の生活が、
省吾と契約することによって、助かると言う安易な考えだけだった。
それなのに、省吾は優しく、毎日が楽しかった。
どうしても元彼と比べてしまう。
全てに置いて、省吾はミクの叶えて欲しい行動の上をいく。
苦手なパンケーキのお店にいってくれたことは、すごく嬉しかった。
そうか、最後だから夢を叶えてくれたのかな。
もう、省吾に会えないと思うと、自然と涙が溢れてきた。
ミクはこれからのことを考える余裕はなかった。