契約結婚のはずが、御曹司は一途な愛を抑えきれない
「社長お待ちください」

省吾は渡辺を振り切り、社長室を後にした。

総務部のドアを開けて入ってきた省吾に、視線が集中した。

「社長、どうなさいましたか」

総務部部長、進藤が慌てた様子で尋ねた。

省吾は何も答えず、必死に誰かを探している様子だった。

ミクは目を合わさないように俯いていた。

すると、省吾は大きな声でミクの名前を叫んだ。

「橘花ミク、どこにいる」

一瞬、総務部全員がミクの方を見た。

すると、省吾はまるで獲物でも見つけたように、口角を上げてニヤッと笑った、そしてミクに向かって来た。

「ミク、今晩食事に付き合え、社長命令だ、社員通用口に車を回しておく、
仕事が終わったら、こい、いいな」

そして、省吾は総務部を後にした。

何が起こったのか、総務部はシーンと鎮まりかえり、その静寂を破ったのは、

部長の近藤だった。

「おい、橘花、お前社長と付き合ってるのか」

「ち、違います」

「だって、お前の名前を呼び捨てにしていたじゃないか」

「先輩?」

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