契約結婚のはずが、御曹司は一途な愛を抑えきれない
「実は省吾さんが不調を訴えに私のところへやってきた時のことです」

矢部先生はその時のことを話してくれた。

「先生、俺は誰からも愛してもらえないのかな」

「いきなり、どうされたのですか」

「ミクと俺は契約結婚なんだ」

「そうでしたか」

「バーで飲んでいる時、ミクを見かけた、俺さあ、一目惚れしたんだ、
恋人に振られて泣いていて、放っておけなくて、ホテルに行ってミクを
抱いた、俺、親父の跡を継いで社長就任が決まってて、でもやりたくなかったんだよな」

矢部先生は省吾の話にずっと耳を傾けていた。

「でも、ミクが忘れていった社員証が辰巳グループのもので、
それを知って、俄然やる気になった、だって好きな女と一緒の職場って
やばいだろ」

「そうですね、テンションあがりますね」

「でも、いきなり振られた、食事に誘ったら、代わりの子がきて、
俺、すげえショックだった」

「そうでしたか」

「体調悪いって早退したから、ミクのアパートに行ったら、親に仕送りしてるって、
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