怪奇集め その手をつないでいられるうちにできること
バケルくん
バケルという少年の話を聞いた私たちはバケルについてネットを中心に調べていた。意外と情報が少なく、捜査は難航していたので、結果的に後回しになっていた。バケルというのは本当の姿が不明が故、全く全容がつかめないというのが本当の所だった。知らず駅にいたのはたまたまだったのかもしれない。出現率が高いのかどうかというのはいざなに確認したほうがいいのかもしれない。普通にこちらの世界にいるという話も昭和の子供新聞には載っていた。主に昭和から平成初期に目撃情報や噂はあったようだが、平成後期から令和になってからはそのような情報はみつからなかった。少年の姿は仮なのかもしれない。本当は、人間の姿ではないのかもしれないし、ましてや動物でもなく液体のようなものが本質なのかもしれない。化ける故、真実は闇の中だ。
知らず駅の女性の話では普通の少年で、服装は黄色いTシャツだったと聞く。そして、紺色の半ズボンだったらしい。髪型は昭和風な坊ちゃん狩り。表情は無。一言で言うと不気味で怖い。バケルは化けることが得意らしいけれど、何にでも化けられるのかは検証不可能なので、把握は難しい。
怪奇集めというホームページと掲示板を開設した。というのも、こちらからアポをとるよりも、ネット上で集めたほうがずっと早いということに気づいたからだ。特に、ネットに情報が少なく、書籍にも載っていないものは特に情報が得られにくい。昭和の雑誌は子供向けのものが多く、正直本当なのかもわからない。情報源はあいまいで聞くにも聞けないでいた。
「ホームページの開設提案した俺、天才だよな」
凛空は得意気だ。
「開設したのは私だけどね」
いつも実行するのは私。凛空は口だけ出している。
「提案くらい誰でもできるでしょ」
「でも、一番はインターネットだよな。無条件に世界とつながるってロマンだなぁ」
「ロマンっていうより怪奇を集めなきゃいけないんだから、私たちは感傷に浸る暇はないってことよ」
「現実主義だなぁ」
「私たちは現実の中で、生きなきゃいけないでしょ」
相も変わらずの凛空のマイペースさには呆れてしまう。自分の未来がかかっているなんて微塵も感じさせないふわっとした感じ。でも、これがキリキリしていたら、それはそれで二人の空間は重く苦しいものとなるのかもしれない。
嘘でもいいから、たくさんの様々な情報がほしいと願う。
アカウントでは、様々な怪奇体験を募集する。ジャンルは特に指定なし。身の毛もよだつ怪奇ものから、奇妙で不思議な体験。さらに、じんわりほっこりするような怪奇まで何でもOKだ。できれば、怪奇魂をいただけるほうがありがたいので、なくしてもいいお話大歓迎と書いておく。もちろん、趣味として興味として読んでおきたい気持ちもあり、どんな些細な怪奇体験でもお待ちしておりますと間口を広げた。
バケルについて調べているときに、バケルに遭遇した話という書き込みをしてくれた人がいた。書き込み名はKKさんだ。KKさんは子供の時に、バケルらしき子供と遊んだことがあったという。のちに、あれがバケルだったのかとネットで知ったらしい。ずっと記憶の奥にしまっていたバケルとの時間。小学校低学年くらいならば、そんなに親しくない人とでも何となく一緒に遊んでしまうということはよくある。気にすることもなかったのかもしれないが、何となく違和感があり、心にしまっていたらしい。
♢♢♢
KKと申します。実は、小学2年生の頃にバケルらしき妖怪少年と遊んだ記憶があるんです。その子は小学校にはいない少年で、学区外の子供が近所にいることは珍しいことでした。それに、あまり笑わないし無口だったと記憶しています。田舎だったため、学校の生徒のほぼ全員の名前と顔は知っていたので、名も知らぬ少年が小さな町にいること自体珍しいことでした。それ故、鮮明に記憶に残っていました。
「君は誰? この町の子供じゃないよね。引っ越してきた転校生?」
「違うよ」
「じゃあ、遊びに来たの?」
「そうだよ」
「親戚の家? この辺りの家はだいたいわかるから、誰の家?」
「秘密」
「名前は?」
「秘密」
「秘密が多いな。それじゃあ名前も呼べないな」
「じゃあバケルって呼んでよ」
「変わった名前だな」
「あだ名だよ」
そう言うと黙々と砂遊びを始める。声も容姿も子供そのものだった。
「この町の町長さんの家はあそこだよね」
バケルが言う。
「そうだよ。用事があるのかい?」
「別に」
そのまま地べたを見つめていた。その時代にはよくいる雰囲気の服装で、特に目立つわけではないのだけれど、独特な何かを感じた。
その後、バケルを名乗る少年を度々見かけるようになった。
決まって近所の砂場だった。町長の家がよく見える場所で、まるで監視をしているかのようにも思えたが、子供だったので、それ以上なにも考えずに遊んでいた。
その後、町長が悪いことをして、逮捕されたというニュースが流れた。そして、その後、町長よりも20歳年下の美人な奥さんが再婚したらしいという噂も流れていた。誰と再婚したのかはわからなかったが、一度元町長の奥さんを見かけたことがあった。この町では珍しい垢抜けた美人で若い女性だったのでとても目立っていた。目鼻立ちは整っており、スタイルは抜群だ。幼いながらも、美人ということは理解できていた。
そこにいたのは、銀髪の美しい男性だったというのだった。でも、ひとつ気になったのは、バケルという少年がつけていた大きな目立つ銀色のイヤリングのようなものだった。銀髪の美青年とバケルは全く同じイヤリングをしていたのだった。当時、男性がイヤリングをすること自体珍しい時代だったので、とても鮮明に記憶に残っていた。男の子供がイヤリングをするなんて、昭和時代には考えられない。今でも、滅多に見かけない。
もしかしたら、バケルは化けるだったのかもしれないと、ふと、思う。子供にも大人にも不細工にも美男子にも化けることができる。女性でも男性でもそれは化けることができるのだろう。それが、何者なのかは今でも説明することはできない。
こんな投稿をしたのは、最近社長が解任されたという事件があったからだ。バケルに似た少年を一度見かけた。その後、社長は不祥事が判明して解任された。つまり、座敷童の逆バージョンなのかもしれない。
人に不幸をもたらすのがバケルではないだろうか。
彼を敵に回すときっと災難が降りかかる。まるで小雨が降るように、その災難からは、掻い潜ることができない。そして、社長の娘が銀色のピアスをつけた男と歩いている様子を目撃したの男もあの時を思い出すきっかけになった。度々娘さんのことは紹介されており、社員は認知していた。美しい女性なので、憧れの的でもあった。その後、美しい娘が男性とうまくいかなくなり、自殺をしたという噂を耳にした。ニュースでもちらりと見たほどの些細な事実だった。所詮は他人事だ。そして、町長の妻がその後行方不明になったという噂を思い出した。明日は我が身かもしれない。
その投稿は事実という感じがじわりと伝わってくる。他人事であり、ひょうひょうとした文章なのだが、事実らしき怪奇な出来事がうまく融合されているように感じた。銀色のイヤリングはいざながしていた気がする。あの時は余裕がなく、そこまでじっくり彼の容姿を見たわけではない。しかし、彼は全体的に銀色の雰囲気だった。髪の毛も服装も白銀という印象が強い。バケルといざなはどこかでつながっているのかもしれないし、バケルがいざなに化けただけなのかもしれない。
投稿者に実際に話を聞きたいとメッセージを送る。
「お金なしでというのはちょっとね。金銭的に貧困だから」
大人はいつもそうだ。お金が一番で、その対価に何かを与えてくれる。
「お金、払える額なら払おうか」
「でも、嘘だったらどうする? こういうのっていくらでも作り話ってつくれるでしょ」
「嘘だったら記憶魂ってもらえないってことかな」
「そこらへん、ちゃんときいてなかったぁー」
「もらえないってことだとおもうけどね」
知らず駅の女性の話では普通の少年で、服装は黄色いTシャツだったと聞く。そして、紺色の半ズボンだったらしい。髪型は昭和風な坊ちゃん狩り。表情は無。一言で言うと不気味で怖い。バケルは化けることが得意らしいけれど、何にでも化けられるのかは検証不可能なので、把握は難しい。
怪奇集めというホームページと掲示板を開設した。というのも、こちらからアポをとるよりも、ネット上で集めたほうがずっと早いということに気づいたからだ。特に、ネットに情報が少なく、書籍にも載っていないものは特に情報が得られにくい。昭和の雑誌は子供向けのものが多く、正直本当なのかもわからない。情報源はあいまいで聞くにも聞けないでいた。
「ホームページの開設提案した俺、天才だよな」
凛空は得意気だ。
「開設したのは私だけどね」
いつも実行するのは私。凛空は口だけ出している。
「提案くらい誰でもできるでしょ」
「でも、一番はインターネットだよな。無条件に世界とつながるってロマンだなぁ」
「ロマンっていうより怪奇を集めなきゃいけないんだから、私たちは感傷に浸る暇はないってことよ」
「現実主義だなぁ」
「私たちは現実の中で、生きなきゃいけないでしょ」
相も変わらずの凛空のマイペースさには呆れてしまう。自分の未来がかかっているなんて微塵も感じさせないふわっとした感じ。でも、これがキリキリしていたら、それはそれで二人の空間は重く苦しいものとなるのかもしれない。
嘘でもいいから、たくさんの様々な情報がほしいと願う。
アカウントでは、様々な怪奇体験を募集する。ジャンルは特に指定なし。身の毛もよだつ怪奇ものから、奇妙で不思議な体験。さらに、じんわりほっこりするような怪奇まで何でもOKだ。できれば、怪奇魂をいただけるほうがありがたいので、なくしてもいいお話大歓迎と書いておく。もちろん、趣味として興味として読んでおきたい気持ちもあり、どんな些細な怪奇体験でもお待ちしておりますと間口を広げた。
バケルについて調べているときに、バケルに遭遇した話という書き込みをしてくれた人がいた。書き込み名はKKさんだ。KKさんは子供の時に、バケルらしき子供と遊んだことがあったという。のちに、あれがバケルだったのかとネットで知ったらしい。ずっと記憶の奥にしまっていたバケルとの時間。小学校低学年くらいならば、そんなに親しくない人とでも何となく一緒に遊んでしまうということはよくある。気にすることもなかったのかもしれないが、何となく違和感があり、心にしまっていたらしい。
♢♢♢
KKと申します。実は、小学2年生の頃にバケルらしき妖怪少年と遊んだ記憶があるんです。その子は小学校にはいない少年で、学区外の子供が近所にいることは珍しいことでした。それに、あまり笑わないし無口だったと記憶しています。田舎だったため、学校の生徒のほぼ全員の名前と顔は知っていたので、名も知らぬ少年が小さな町にいること自体珍しいことでした。それ故、鮮明に記憶に残っていました。
「君は誰? この町の子供じゃないよね。引っ越してきた転校生?」
「違うよ」
「じゃあ、遊びに来たの?」
「そうだよ」
「親戚の家? この辺りの家はだいたいわかるから、誰の家?」
「秘密」
「名前は?」
「秘密」
「秘密が多いな。それじゃあ名前も呼べないな」
「じゃあバケルって呼んでよ」
「変わった名前だな」
「あだ名だよ」
そう言うと黙々と砂遊びを始める。声も容姿も子供そのものだった。
「この町の町長さんの家はあそこだよね」
バケルが言う。
「そうだよ。用事があるのかい?」
「別に」
そのまま地べたを見つめていた。その時代にはよくいる雰囲気の服装で、特に目立つわけではないのだけれど、独特な何かを感じた。
その後、バケルを名乗る少年を度々見かけるようになった。
決まって近所の砂場だった。町長の家がよく見える場所で、まるで監視をしているかのようにも思えたが、子供だったので、それ以上なにも考えずに遊んでいた。
その後、町長が悪いことをして、逮捕されたというニュースが流れた。そして、その後、町長よりも20歳年下の美人な奥さんが再婚したらしいという噂も流れていた。誰と再婚したのかはわからなかったが、一度元町長の奥さんを見かけたことがあった。この町では珍しい垢抜けた美人で若い女性だったのでとても目立っていた。目鼻立ちは整っており、スタイルは抜群だ。幼いながらも、美人ということは理解できていた。
そこにいたのは、銀髪の美しい男性だったというのだった。でも、ひとつ気になったのは、バケルという少年がつけていた大きな目立つ銀色のイヤリングのようなものだった。銀髪の美青年とバケルは全く同じイヤリングをしていたのだった。当時、男性がイヤリングをすること自体珍しい時代だったので、とても鮮明に記憶に残っていた。男の子供がイヤリングをするなんて、昭和時代には考えられない。今でも、滅多に見かけない。
もしかしたら、バケルは化けるだったのかもしれないと、ふと、思う。子供にも大人にも不細工にも美男子にも化けることができる。女性でも男性でもそれは化けることができるのだろう。それが、何者なのかは今でも説明することはできない。
こんな投稿をしたのは、最近社長が解任されたという事件があったからだ。バケルに似た少年を一度見かけた。その後、社長は不祥事が判明して解任された。つまり、座敷童の逆バージョンなのかもしれない。
人に不幸をもたらすのがバケルではないだろうか。
彼を敵に回すときっと災難が降りかかる。まるで小雨が降るように、その災難からは、掻い潜ることができない。そして、社長の娘が銀色のピアスをつけた男と歩いている様子を目撃したの男もあの時を思い出すきっかけになった。度々娘さんのことは紹介されており、社員は認知していた。美しい女性なので、憧れの的でもあった。その後、美しい娘が男性とうまくいかなくなり、自殺をしたという噂を耳にした。ニュースでもちらりと見たほどの些細な事実だった。所詮は他人事だ。そして、町長の妻がその後行方不明になったという噂を思い出した。明日は我が身かもしれない。
その投稿は事実という感じがじわりと伝わってくる。他人事であり、ひょうひょうとした文章なのだが、事実らしき怪奇な出来事がうまく融合されているように感じた。銀色のイヤリングはいざながしていた気がする。あの時は余裕がなく、そこまでじっくり彼の容姿を見たわけではない。しかし、彼は全体的に銀色の雰囲気だった。髪の毛も服装も白銀という印象が強い。バケルといざなはどこかでつながっているのかもしれないし、バケルがいざなに化けただけなのかもしれない。
投稿者に実際に話を聞きたいとメッセージを送る。
「お金なしでというのはちょっとね。金銭的に貧困だから」
大人はいつもそうだ。お金が一番で、その対価に何かを与えてくれる。
「お金、払える額なら払おうか」
「でも、嘘だったらどうする? こういうのっていくらでも作り話ってつくれるでしょ」
「嘘だったら記憶魂ってもらえないってことかな」
「そこらへん、ちゃんときいてなかったぁー」
「もらえないってことだとおもうけどね」