幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
第一章 真夜中の騒ぎ
 キュイーキュイーキュイー!!

 真夜中の静かな住宅街に、ホームセキュリティの警報音が鳴り響く。

 「な、なに?!」

 ガバッと飛び起きた朱里(あかり)は、ベッドの横の窓を開けて外を見た。

 「朱里!」
 「ギャーー!!」

 いきなり目の前にニョキッと現れた人影に、思わず朱里は力いっぱいビンタを食らわせた。

 「いってえー!何すんだよ、この怪力女!」
 「え?あ、(あきら)?」

 左頬を押さえて顔をしかめている隣人の瑛に、朱里は驚いて目を丸くする。

 「何やってんの?ここ、2階だよ?」

 朱里の部屋の外にいる瑛は、屋根の上にいた。

 どうやら自分の屋敷の塀を乗り越えて、朱里の家の屋根に飛び移ったようだった。

 「私の家に忍び込もうとしたの?それで自分ちの警報鳴らすなんて…。何やってるのよ?」
 「違うってば!ほら、あそこ」

 朱里は、瑛が指を差した先を見る。

 ちょうど瑛と朱里の家の境い目、道路の上に、誰かが全身黒ずくめの男を組み敷いていた。

 「え、菊川さん?」

 細い身体のどこにそんな力があるのだろう。
 うつ伏せにした男の両腕を腰の位置で押さえつけ、涼しい顔でこちらを見上げる。

 「朱里さん、ご無事ですか?」
 「え、ええ。私は何も…」
 「良かった」

 低く落ち着いた声でそう言って、菊川は朱里に微笑んだ。

 街灯のほのかな明るさの中に、大人っぽく紳士的な菊川の笑顔が見えて、朱里は思わずドキッとした。
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