幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
その後、演奏会についての打ち合わせの為、事務局長と会議室に向かっていると、東条が追いかけてきた。
「まだ少し時間があるから、僕も同席して構わないかな?」
瑛が頷く。
「もちろんです。是非ご一緒に」
そうして四人で会議室に顔を揃えた。
「まず、今回の未来ハーモニーホールでの演奏会は、皆様に私達の趣旨を知っていただく目的があります。桐生ホールディングスと新東京フィルハーモニー交響楽団がタッグを組み、訪問演奏などで社会貢献をしていく。その為にまずは、弊社とこちらの楽団がお互いを知り、関わりを持つことで、パートナーとして協力し合うことを確認出来ればと。合わせて、投資家の方々やマスコミ各社にも広く周知したいと考えております」
朱里が資料を見せながら説明する。
東条と目が合うとミーハースイッチが入る為、ひたすら資料を目で追いながら話していた。
「その点を踏まえ、今回の演奏会のコンセプトやプログラムを考えていただければと思っております。いかがでしょうか?」
すると早速東条が口を開いた。
「なるほど、良く分かりました。お客様は関係者のみで、小さなお子様からご年配の方まで幅広く、特にクラシックファンという訳ではないのですよね?そうすると、ホールでオーケストラを聴くのが初めてという人もいるだろうか」
「はい。小さなお子様は、ほとんどがそうかもしれません。この演奏会では年齢制限も設けず、赤ちゃん連れの方も親子室で楽しめるようにご案内したいと考えております」
「それはいいね!小さいお子さんにこそ、本物の音楽に早くから触れて欲しいと僕も思っている。それなら選曲もしっかり考えないとな…」
そう言うと東条は、腕を組んで目を閉じる。
「まずは、耳馴染みのあるクラシック曲。それに映画音楽や子ども達も教科書で習うような曲も織り交ぜたいな。プログラムは、すぐに決めないといけないかい?」
「いえ。内々の演奏会ですし、特にいつまでに、と急がなくても構いません」
「分かった。そしたら少し時間をもらえるかな?僕も団員と相談しておくよ」
「はい、かしこまりました。よろしくお願いいたします」
朱里が頭を下げ、今日のところはこれで終了となった。
事務局長に今後のスケジュールを渡す朱里を後ろから見守っている瑛に、東条が声をかける。
「彼女は、何か音楽をやっているのかい?」
「あ、はい。ヴァイオリンを」
「へえー。君は彼女の演奏を聴いたことは?」
「何度かあります。ですが、私は音楽はさっぱりでして…。これから色々勉強しようと思っているところです」
「そう。彼女の演奏で、印象に残っている曲はある?」
え?と瑛は戸惑ってから口を開いた。
「強いて挙げるなら、リストの『愛の夢』第3番です」
ふうん、と東条は考え込む。
「どんな印象だったの?彼女の演奏は」
「そうですね…。とても温かくて優しくて、包み込んでくれるような力強さと安心感もあって。私の幼い頃を思い出させてくれました。かけがえのない幸せだった日々を。そしてこれからの人生にも背中を押して送り出してくれるような、そんな演奏でした」
そして自信なさげに、すみません、変な感想で…と付け加える。
「いや、そんなことはない。彼女の演奏が君にしっかり届いたのだろうね。音楽を通じて君達は想いを共有したんだ。素敵なことだよ。大事にしなさい、彼女を」
え…と驚く瑛に、東条は頷いて笑いかけた。
「まだ少し時間があるから、僕も同席して構わないかな?」
瑛が頷く。
「もちろんです。是非ご一緒に」
そうして四人で会議室に顔を揃えた。
「まず、今回の未来ハーモニーホールでの演奏会は、皆様に私達の趣旨を知っていただく目的があります。桐生ホールディングスと新東京フィルハーモニー交響楽団がタッグを組み、訪問演奏などで社会貢献をしていく。その為にまずは、弊社とこちらの楽団がお互いを知り、関わりを持つことで、パートナーとして協力し合うことを確認出来ればと。合わせて、投資家の方々やマスコミ各社にも広く周知したいと考えております」
朱里が資料を見せながら説明する。
東条と目が合うとミーハースイッチが入る為、ひたすら資料を目で追いながら話していた。
「その点を踏まえ、今回の演奏会のコンセプトやプログラムを考えていただければと思っております。いかがでしょうか?」
すると早速東条が口を開いた。
「なるほど、良く分かりました。お客様は関係者のみで、小さなお子様からご年配の方まで幅広く、特にクラシックファンという訳ではないのですよね?そうすると、ホールでオーケストラを聴くのが初めてという人もいるだろうか」
「はい。小さなお子様は、ほとんどがそうかもしれません。この演奏会では年齢制限も設けず、赤ちゃん連れの方も親子室で楽しめるようにご案内したいと考えております」
「それはいいね!小さいお子さんにこそ、本物の音楽に早くから触れて欲しいと僕も思っている。それなら選曲もしっかり考えないとな…」
そう言うと東条は、腕を組んで目を閉じる。
「まずは、耳馴染みのあるクラシック曲。それに映画音楽や子ども達も教科書で習うような曲も織り交ぜたいな。プログラムは、すぐに決めないといけないかい?」
「いえ。内々の演奏会ですし、特にいつまでに、と急がなくても構いません」
「分かった。そしたら少し時間をもらえるかな?僕も団員と相談しておくよ」
「はい、かしこまりました。よろしくお願いいたします」
朱里が頭を下げ、今日のところはこれで終了となった。
事務局長に今後のスケジュールを渡す朱里を後ろから見守っている瑛に、東条が声をかける。
「彼女は、何か音楽をやっているのかい?」
「あ、はい。ヴァイオリンを」
「へえー。君は彼女の演奏を聴いたことは?」
「何度かあります。ですが、私は音楽はさっぱりでして…。これから色々勉強しようと思っているところです」
「そう。彼女の演奏で、印象に残っている曲はある?」
え?と瑛は戸惑ってから口を開いた。
「強いて挙げるなら、リストの『愛の夢』第3番です」
ふうん、と東条は考え込む。
「どんな印象だったの?彼女の演奏は」
「そうですね…。とても温かくて優しくて、包み込んでくれるような力強さと安心感もあって。私の幼い頃を思い出させてくれました。かけがえのない幸せだった日々を。そしてこれからの人生にも背中を押して送り出してくれるような、そんな演奏でした」
そして自信なさげに、すみません、変な感想で…と付け加える。
「いや、そんなことはない。彼女の演奏が君にしっかり届いたのだろうね。音楽を通じて君達は想いを共有したんだ。素敵なことだよ。大事にしなさい、彼女を」
え…と驚く瑛に、東条は頷いて笑いかけた。