幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 「朱里、朱里?大丈夫か?」
 「うん、大丈夫…」

 そう言いつつ、朱里の足取りはおぼつかない。

 空腹でワインを飲んだこと、お腹がいっぱいで眠くなったこと、ドッと疲れが出たこと、とにかく色々なことが朱里の身体を重くしていた。

 「ほら、もうすぐ車だから。がんばれ」
 「うん…」

 よろける身体を支えつつ、瑛はようやく菊川の待つ車に朱里を乗せた。

 自分の右肩に朱里の頭を抱き寄せると、朱里は身体を預けて眠りに落ちる。

 「菊川、なるべく静かに運転してくれ」
 「承知しました」

 ゆっくりと車が走り出し、瑛はそっと朱里の寝顔を見た。

 (俺は酷い男だな)

 先程の東条の言葉を思い返し、瑛は考え込んでいた。

 (自分の都合で朱里を振り回してばかりだ。もう以前のように話は出来ないと言っておきながら、実際は朱里に頼ってばかりで。朱里、いつもありがとう。彼女にも優しくしてくれて、仕事でも俺を助けてくれて。俺が朱里を幸せに出来れば、どんなに良かっただろう…)

 そんな幸せは夢見てはいけないのだと、瑛はギュッと眉を寄せて自分の気持ちを押し殺した。
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