幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 「うわー、綺麗ねー」

 朱里は外の景色を眺める。

 羽田空港から大阪の伊丹空港へ飛び、そこからまた小さな空港へ乗り継いで向かっていた。

 小さな飛行機の窓から、緑の山々が連なっているのが見える。

 「絶対空気が美味しいわよね」

 そう言って朱里は深呼吸する。

 「いや、まだ飛行機の中だし」

 瑛は苦笑いした。

 「あー、旅行なんて久しぶり過ぎてわくわくしちゃう!お土産、何買おうかなー」
 「朱里、一応出張だからな」
 「あ、そっか。あはは!」

 今回、朱里は菊川の同伴を断り、瑛と二人だけで行くことにした。

 それにはもちろん訳がある。

 聖美との縁談が破談となり、朱里の所にも聖美から連絡があった。

 瑛と結婚しても自分は幸せになれそうにない。
 結婚する前から既にあれこれ悩んでしまい、自信がなくなったと、素直な気持ちを話してくれた。

 そして、ずっと憧れていたイギリスに留学出来ることになった!と嬉しそうにしていた。

 今まで、心配だからだめだと両親に反対されていたが、今回の破談で聖美がどうしても気持ちを新たにしたいと頼んだところ、全寮制の所ならと認めてもらえたらしい。

 ドキドキするけど、色んな経験して成長してきます!そしてまたいつか、朱里さんに必ず会いに行きます!と話してくれた。

 そんなふうに、前に進み始めている聖美と対照的に、瑛はずっと殻に閉じこもっているようだった。

 朱里は、瑛がどんなに真剣にこの結婚に向き合っていたか良く知っている。

 聖美に対しても、優しく紳士的に接して大事に守っていこうとしていた。

 それが結納直前に、突然破談を申し入れられたのだ。
 すぐに気持ちの切り替えなど出来ないだろう。

 雅からも、家でもずっと元気がなくて心配だと聞かされていた。

 (菊川さんがいなければ、私と話すしかなくなる。何か少しでも心のわだかまりを吐き出してくれたら。出張とはいえ、綺麗な自然に囲まれた場所で、瑛の心が癒やされればいいな)

 そんな事を願いながら、朱里は窓の外を眺めていた。
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