幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 「ウェルカーム!!」
 「…は?」

 扉から中に入った瞬間クラッカーが鳴り、頭の上にパラパラと金色の紙吹雪が降ってきた。

 朱里と瑛が呆然としていると、ステージの上で大きなうちわを持った女の子達が、せーの!と声を揃えた。

 「桐生さん!栗田さん!いらっしゃいませー!」

 イエーイ!と揺らしているうちわには、桐生
 瑛さん、栗田 朱里さん、とまるでアイドルのコンサートのように書かれている。

 「どうぞ!真ん中の席にお座りくださーい!」
 「あ、は、はい」

 勢いに負けて、二人で大人しく言われた席に座る。

 「ではまず、歓迎の演奏から始めまーす」
 「はあ…」

 女の子達はステージの真ん中に集まると、クラリネットやフルート、トランペットやサックスで、流行りの曲を演奏する。

 その周りを数人が、ポンポンを持って歌いながら踊り出した。

 客席に座っている大人達も拍手で盛り上げる。

 朱里もいつしか笑顔で手拍子していた。

 キュートで元気な女の子達が歌い終わると、続いて町内婦人会のおばさま方が登場し、盆踊りのような踊りを披露してくれる。

 (うおー、いきなりの別世界)

 朱里はテンポに合わせて、ゆっくりと手拍子する。

 「ではここで、町長より、歓迎の言葉です」

 (ここでー?この流れでー?)

 朱里は心の中で突っ込む。

 「えー、こんな田舎にようこそ!ここに来たならもう我々の仲間です。ではご一緒に歌いましょう。長島くん、カラオケ流して。いつものあの曲ね」

 カセットデッキから演歌が流れ、町長が得意げに歌い始めた。

 「ねえ、瑛。ここってニーズがないとか言ってたけど、めちゃくちゃあるよね」
 「ああ。取り壊されると困るんじゃないか?」

 二人でヒソヒソと囁く。

 とにかくホールの設備や音の響き具合などは充分下調べ出来た。
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