幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 「ではでは、かんぱーい!」

 なんだか良く分からないまま、どこだか分からない広間のある家に連れて来られ、料理とお酒を振る舞われる。

 ありがとうございます、と勧められるまま頂いていると、先程の中高生達がわらわらと寄ってきた。

 「あの!芸能人ってほんとに街の中歩いてるんですか?」
 「え?あ、テレビに出てる人?うん、たまに見かけるよ」

 ひゃーー!!と女の子達は声を上げる。

 「実在するんだー!」
 「生身の人間なんだー!」

 ひとしきり盛り上がってから、また真剣に聞いてくる。

 「あの!瑛さんと朱里さんは、つき合ってるんですか?」
 「え?ううん。単なる部長と部下よ」

 部長ーー!!と、また女の子達は仰け反る。

 「部長って、初めて見た!」
 「役場の係長より上って事だよね?」
 「すごーい!」

 女の子達は瑛を取り囲む。

 「瑛部長!サインを頂けませんか?」
 「サ、サイン?!そんなのないよ」
 「ええー?あるでしょー?だって桐生 瑛って、桐生ホールディングスの芸能人って事でしょ?」
 「は?ちょっと、言ってる意味が…。あ、名刺ならあるよ。ほら」

 キャー!と女の子達は手を伸ばす。

 「私も欲しい!」
 「私もー!」
 「わ、分かったから。はい、ちゃんとみんなの分あるから」

 揉みくちゃにされながら、瑛は名刺を配る。

 (ぷっ、なんだか笑える!瑛、冴えないおじさんみたい)

 朱里はタジタジになっている瑛を見て、ふふっと笑った。
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