幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 そうこうしているうちに夜になり、そろそろ宿に移動しようと二人は立ち上がった。

 「え?宿ってどこの?まさか、隣町の?」
 「あー、車でも1時間はかかるよ。今夜はもうここに泊まりな。ここも一応宿だよ。それにここの風呂、天然の温泉だよ!」
 「じゃ、あっちの宿には電話しとくよ。大丈夫、大丈夫!二人減るくらいどうってことないから」

 いや、あの、と言葉を挟むこともままならず、朱里達はそのままそこで泊まることになった。

 温泉に入り、借りた浴衣を着て客間に行くと、ふかふかの布団が敷いてあった。

 「はあー、気持ちいい」

 朱里は布団にうつ伏せに倒れ込む。

 「お日様の匂いがする」
 「朱里、ほら。冷たいお茶」
 「ありがとう」

 瑛からグラスを受け取った朱里は、ん?と眉間にシワを寄せる。

 「ねえ、この布団2組敷いてあるね」
 「あ、ほんとだ」
 「隣にも部屋あるの?」

 瑛が入り口に向かう。

 「いや、廊下しかない」
 「…ってことは?」

 二人でじっと布団を見つめる。

 「俺、廊下で寝るわ」

 そう言って布団を持っていこうとする瑛を、朱里は慌てて止める。

 「バカ!あんた仮にも御曹司でしょ?そんな事させられないわよ」
 「別にいいよ。バカって言われる程度の御曹司だし」
 「ちょ、違うって!部長!まさか部長を追い出すなんて出来ませんから!」
 「なんだよもう。バカか御曹司か部長、どれか一つにしてくれよ」
 「いいから、ほら!ここで寝なさい!」

 朱里は瑛の布団を隣に並べた。

 「寝ながら話そう。修学旅行みたいにね。先に寝ちゃった方が負けよ」

 ふふっと笑うと、朱里は部屋の電気を豆電球にした。

 仕方なく瑛も布団に入る。
 二人はぼんやりと天井を見上げた。
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