幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 「いやー、良かったな!うまく進んで」
 「ほんと!あの町の皆さんもいい人達ばかりだし、東条さんも良い楽団を紹介してくださったし」

 うんうんと頷きつつ、瑛は腕時計に目を落とす。

 「まだ3時か。朱里、ちょっとブラブラしてから帰らないか?飛行機、夜の便だしな」
 「ほんと?!いいの?」
 「ああ。お土産買いたいんだろう?」
 「うん!」

 まるで遠足のように、朱里はウキウキと行き先を考える。
 瑛は黙ってついて行くことにした。

 「やっほー!神戸に上陸!」

 電車で40分程で神戸に到着した。

 「海だー!あ、山もー!」
 
 海と山が平行に続いていて、朱里は右と左をキョロキョロと見比べる。

 「ねえ、山の上から海を見たら素敵じゃない?」
 「そうだな。ロープウェイで上に上がるか」
 「うん。やったー!」

 子どものようにはしゃぐ朱里に、瑛は目を細める。

 「そう言えばさ、小学校の遠足の時、朱里浮かれた挙句にお菓子地面にぶちまけただろ?」
 「ぶっ!良く覚えてるねー、そんな昔のこと」
 「だってお前、それまでウッキウキだったのに、お菓子落とした瞬間、この世の終わりみたいな顔して泣き始めてさ」
 「そうだったねー。それでみんなから少しずつ分けてもらったんだっけ」
 「そう。そしたらまたコロッとご機嫌になってさ」
 「ふふ、だって、色んな種類のお菓子たくさんもらって、なにこれー?美味しそうーって」
 「結局、自分の持って来たお菓子よりも豪華になってな」
 「そうそう!結果オーライだね」

 いつ以来だろう。
 こんなふうに、二人で他愛もない昔の話で笑い合うのは。

 朱里は綺麗な景色を眺めながら、嬉しさで胸がいっぱいになった。
< 137 / 200 >

この作品をシェア

pagetop