幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 だが朱里はそれからも、社長には相談出来ずにいた。

 そもそも自分は、新卒採用の桐生ホールディングスの説明会に参加し、エントリーして試験や面接を受けるという通常のルートから外れてしまっている。

 それなのに社長に相談するなど、とんでもなく失礼なことだ。

 かと言ってこれから別の企業を受けるのも、なかなかすんなりとはいかない。

 自分のやりたいことがまだ明確に見えていない為、どの企業が自分に合うのかも分からない。

 じっくり探したいところだが、コンサートの企画はますます忙しくなるばかりだ。

 ついに朱里は腹をくくった。
 新卒採用は諦める。

 コンサートを成功させる為に、今、目の前にある仕事に集中しよう。

 漠然としたまま就職活動したのでは、間違いなくどこも不採用になるだろう。

 こうなったら焦らず、今自分がやるべき仕事をしっかりこなしながら、本当にやりたいことを見つけよう。

 そしてそれが見つかった時、中途採用で受け入れてくれる企業を受けよう、と。

 「よし!兵庫のコンサートも必ず成功させるぞ!」

 朱里は今度こそ気合いを入れ直して頷いた。
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