幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 夕方まで念入りに確認作業をし、長島の車で、また以前と同じ宿に案内される。

 既に大勢の人が料理を食べながら盛り上がっていた。

 「おおー!お二人ともようこそ」
 「皆さん、お久しぶりです」
 「ほら、はよ食べな」
 「あ、はい。ありがとうございます」

 グラスにビールを注がれて乾杯する。
 結局、誰の宿なのか分からないまま、婦人会の皆さんがたくさんの料理を並べてくれていた。

 「瑛さーん、朱里さーん!」

 中高生の女の子達が、以前と変わらない明るさで取り囲む。

 「あの!お二人の出会いはいつなんですか?」
 「ええ?!何、急に」
 「いいから!ほら、芸能人が記者会見とかしてるでしょ?あんな感じ。ほら!馴れ初めは?」

 馴れ初めって…と戸惑いつつ、幼馴染なの、と答える。

 「キャーー!萌えー!ときめくー!」

 甲高い声の中、朱里はいやいやと手を振る。

 「みんなだって、幼馴染の男の子いるでしょう?」
 「田舎と都会は違いますよ。だって、ファミレスとかカフェとかあるでしょ?ここなんて、一番栄えてるのは商店街ですから。ぜーんぜんムードもありませんよ」
 「そ、そうなの?」
 「そうですよ!あーあ、私もカフェでパンケーキとか食べてみたいなー」

 あー、確かにこの辺りにそんなお店はないだろうなと朱里が頷いていると、また質問が飛んできた。

 「お互いなんて呼んでるんですか?」
 「え?私は部長って」
 「ええー?幼馴染なんでしょ?そんな訳ないですよねー」
 「あ、まあ、仕事じゃない時は瑛って…」

 瑛ー!!と、女の子達は盛り上がる。

 「それで?朱里さんは、朱里って呼ばれてるの?」
 「うん。幼馴染ってそういうもんでしょ?みんなもそうじゃないの?」
 「そうですけど、大人になってもそのままなんて、なんかキュンとしますー。でも幼馴染の関係って、大人になるとどう変化するんですか?」

 ええ?と朱里は首をひねる。

 「うーん…。何も変わらないよ」
 「嘘でしょー?じゃあ、そこからどうやってつき合うの?きっかけは?」

 ちょ、ちょっと待って!と朱里は両手で遮る。

 「みんな、勘違いしてない?私達、つき合ってないよ?」

 うっそだー!と皆は笑い出す。

 「ほんとだって!」

 すると女の子達は、長島達とお酒を飲んでいる瑛に目を向け、ヒソヒソと話し始めた。
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