幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 「はい、いいね。みんな一生懸命練習してくれたのかな?」

 指揮棒を下ろして赤坂は笑顔で尋ねる。
 子ども達は照れたような笑みを浮かべた。

 「凄く一生懸命吹いてくれたね。間違えないように、テンポがズレないようにって真剣だった。でもね、そんなこと考えなくていいよ」

 子ども達は、え?と拍子抜けしたような顔になる。

 「この町ってどんな町なの?」

 ふいに赤坂が、オーボエの子に尋ねる。

 「えっと、もの凄い田舎です。田んぼと畑と山しかなくて、コンビニとかレストランもありません」
 「へえー、それで?」

 今度はフルートの子に顔を向けて聞く。

 「あの、人も少ないので、みんな顔見知りです。小さい子もおじいちゃんおばあちゃんも。誰とでも話すし、みんな仲がいいです」
 「なるほど。それから?」

 トランペットの子が答える。

 「空気が美味しくて、野菜や水も新鮮です」
 「あと、景色が綺麗です。特に夕焼けが」
 「そうそう!山に沈む夕焼けを見ながら、この曲をみんなで聴くんです」

 次々と話し出す子ども達に、赤坂はにこにこ頷く。

 「良い所だねえ。君達の大事な故郷なんだね」
 「はい!大人になっても、この景色は絶対忘れません」
 「そうか。それなら、その想いを込めて演奏しなさい。ここの景色を表現出来るのは君達だけだよ。他の楽団員では無理なんだ。上手い下手とかは関係ない。君達の心の中にある故郷を思い浮かべながら吹いてみなさい。聴いてくれる人達に、こんなに良い所なんだよ、と伝えるつもりでね」
 「はい!」

 子ども達は笑顔で頷いた。
< 152 / 200 >

この作品をシェア

pagetop